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チャーリーとチョコレート工場

wonka『チャーリーとチョコレート工場』@六本木ヴァージンシネマ。先週末、遅ればせながら鑑賞。

チョコレートの香りと一緒に映画が観られるという洒落た演出。あれはチョコというよりもカカオ豆のにおいかな。ココアともまた少し違う。うちの地元にある明治製菓の工場のにおいを思い出す。濃厚で甘くて体と心に染みわたる、カカオのあの香りだ。劇場のチョコアロマはちょっと香料くさかったけど、チョコレート工場を体感するには充分。おもしろい試みだと思った。

オープニングは工場のシーン。そこにダークなシンフォニーがかぶさる。この雰囲気、どことなく『バットマン』ぽい。監督ティム・バートン+音楽ダニー・エルフマンの王道というべきか。ここで流れるチョコレート工場のオートメーション装置の映像は『シザーハンズ』のクッキー製造マシンたちのような生き物風でなく、とても近代的な量産システム。なぜか、このシーンに魅入ってしまった。チョコレート色の生産ライン、雪で真っ白な街に灰色か黒の建物。抑えた色彩で始まったのもちょっと意外だった。

原作はロアルド・ダールの児童文学。子どものころに翻訳本を読んだことがあるが、不気味だけどおもしろいという印象だった。今回の映画化が決まったと聞いてから原作をあらためて読んでみた。やはりおもしろい。わがままな子どもやそれを助長している大人たちへのブラックジョークが強く、まさにティム・バートンが好みそうなダークファンタジーだ。

ジョニー・デップが演じる工場主のウィリー・ウォンカは、原作とはまた違う若々しいイメージで登場。ウォンカは子ども嫌い、人嫌いの変人で、長い間工場から一歩も外に出ず、夢のような不思議なお菓子を作り続けている。ジョニーのはじけっぷりがすごかった。かなりぶっ飛んだ役だが、その飛び跳ね方のベクトルは陽気な『パイレーツ・オブ・カリビアン』とはまた異なり、こちらはひたすら内に向かう不思議ちゃん。おかっぱ頭にシルクハット、白塗り気味のメイク。TMレボリューションの西川貴教に激似ではあったが(笑)、ジョニーのウォンカはビジュアル的にもとてもおもしろかった。

子どもたちや周囲の大人たちもそれぞれキャラが立っていて、なかなかアクが強い。しかし、オープニングや街の風景とは一転してポップな色彩があふれる工場内の秘密の部屋のなかでは、各キャラの濃さもちょうどいい感じ。そして、ウォンカ以上に強烈だったのが、小さな人々・ウンパルンパだった。この工場では、カカオ豆を大切にする南の島?の小人族ウンパルンパが大勢働いている。でも、映画ではどの顔も同じ。画面は合成だが、ウンパルンパの動きは群舞でもそれぞれが微妙に違っていて、奥が深い。ウンパルンパ役のディープ・ロイは1人で何十通りものテイクを演じたそうだ。

このウンパルンパの群舞がとにかく最高で。ルールを破った子どもたちがおかしなことになるたびに、ウンパルンパたちは即興でその子のテーマを歌い、踊る。音楽もノリノリで、80年代ポップス調やヘビメタ風など、かなり凝っている。ビートルズのパロディシーンもあった。無表情な表情とユニークな衣装、キュートな動きが妙にウケる。わがままな子どもとその親たちを諌めるような歌詞はシビアで、シュールなウンパルンパの映像と合わさると悪夢のようだった。

気持ち悪いけど、妙にかわいい。で、もう一度見たくなる。うなされつつもどこか快感。そんな不思議な感覚になる映画だ。1971年制作のジーン・ワイルダー主演『夢のチョコレート工場』でも、ウンパルンパのシーンは非常に強烈で不気味だった。ウンパルンパの悪夢度では、71年版のほうが勝るかもしれない。

ティム・バートンにしては珍しいほのぼのしたラストにもびっくり。原作と違うが、こんな終わり方も悪くないと思った。家族っていいね、そう素直に思えたから。ディビッド・ケリー(ジョーおじいちゃん)とクリストファー・リー(Dr.ウォンカ)ほか、老年の役者さんたちがいい味を出していたなぁ。

photo/映画『チャーリーとチョコレート工場』パンフレットと、英語ペーパーバックス版の原作『Charlie and the Chocolate Factory』(右)。ジョニー・デップ演じるウォンカとクウェンティン・ブレイクの挿絵はちょっと雰囲気が異なる。71年版の映画でのジーン・ワイルダーはこのイメージに近い。

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