演劇

NINAGAWA「十二夜」

jyuniya-sujigaki20日、歌舞伎座・夜の部。NINAGAWA「十二夜」(7/7-7/31)。

シェークスピアの「十二夜」を蜷川幸雄が演出、歌舞伎に仕立てた特別興行だ。主演は尾上菊之助。その父・尾上菊五郎も出演し、菊五郎劇団とNINAGAWA芝居の融合ということになる。しかも題材はシェークスピア。イギリスと日本の古典演劇がどうつながり、掘り下げられていくのか、観る前からとても興味深かった。

幕が開き、いきなり会場がどよめいた。なんと、舞台全面が鏡張り! 鏡面仕上げの金属板をつなげたものだと思うが、2階席に並んだ提灯や我々観客の姿がうす暗がりの中にぼんやりと浮かび上がり、あたりは不思議な空間に。いつもの歌舞伎座でなく、どこか異国の円形劇場にいるような感覚がした。

そして、聴こえてくるのは生のチェンバロの音。舞台は枝垂れ桜の景色に。バロックの調べが静かに流れ、子どもたちが合唱する。そこへ、烏帽子(えぼし)姿の大篠左大臣(中村信二郎)が現れて…。音楽と登場人物の違和感はまったくない。左大臣は装束から高貴な人物とわかるし、そのイメージがチェンバロの音によく合っている。やがて回り舞台が動き、沖合いの船の上のシーンへ。鏡のバックの前に大きな船のセットのみ。景色は非常にシンプルである。ここで尾上菊之助が、男役の斯波主膳之助の扮装で登場。彼はこの芝居で男女の双子(主膳之助と琵琶姫)を演じ分ける。

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Hedwig and The Angry Inch

hedwig 12日の夜は、三上博史のロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」@ZEPP TOKYO。

性転換手術に失敗して“怒りの1インチ”が股間に残ってしまったロックシンガー、ヘドウィグが自分の“カタワレ”を探し求める物語。元は、NYのドラァグ・バーで生まれ、ブロードウェイで演じられるまでになったロックミュージカル「Hedwig and The Angry Inch」。ゲイ、ドラァグクイーン、ベルリンの壁…その特異な題材からキワモノと見る人もいるが、60年代から80年代のロックをベースとした、LIVE劇の秀作だと思う。

私は映画 の「Hedwig and The Angry Inch」でこの作品にハマったクチ。いつか本家のミュージカルを観たいとずっと思っていた。そして昨年、三上博史主演で日本でもミュージカル版が上演。残念ながら昨年の舞台は観に行けず、非常に心残りだったのだが、今回はなんとかチケットをGET。ようやく三上ヘドウィグを観ることができた。

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コクーン歌舞伎「桜姫」

四世鶴屋南北・作「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」を題材とした芝居だが、コクーンの「桜姫」は非常に前衛的で、いわゆる古典歌舞伎とはまったく別モノ。演出はコクーン歌舞伎や平成中村座でおなじみの串田和美氏。

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6日の夜は渋谷・Bunkamuraのシアターコクーンへ。コクーン歌舞伎「桜姫」の2日目。

何が前衛的かというと、まず、舞台美術。画家の宇野亜喜良氏の絵が、この芝居の重要な装飾となっている。場内には美しく妖しい幕絵が何枚も掛かり、上演前から、すでにアンダーグラウンドな気配が満開。故・寺山修司氏の天井桟敷や麿赤児氏の大駱駝艦の世界観が大好きな私にとって、この世界は絶対にアリ、アリ!!

コクーンには花道がないのだが、役者さんたちは客席に何度も乱入し、小屋の空気に一体感をもたらしていた。高さを生かした造形や可動式の舞台装置などがふんだんに使われていて(それを動かすのは河原乞食や河童の風体をした俳優サンたち。彼らは芝居の背景に溶け込み、アングラな景色を作り上げていた)、空間の使い方に独特のものを感じた。

福助サンは天然な姫っぷりがツボ。妖艶でとてもキレイなんだけど、それを大いに喰っていたのがお局・長浦役の扇雀サン。いやー、扇雀サンってこんなに器用な役者だったんだ~(失礼!)、と、私はずっと目からウロコ状態だった。相方の弥十郎サンとのからみもおもしろく、これはもう扇雀サンの新境地でしょう。橋之助サンはクールにキッチリこなした、という感じ。また、ウマいなあと思ったのは勘太郎サン。お兄ちゃん、いなせな悪役だったねぇ。カッコよかった。七之助サンとの対決お笑いシーンも多く、おもしろい。

3時間半を超える長丁場だけど、「芝居小屋という特殊な世界にいる自分」を存分に感じ、最後までよいノリで楽しめた。ただ、後半がちょっと垂れてたかな。原作にある妖艶な怪談話の要素が薄まっていた点を残念に思う。まあ、あれで後半にも力を入れると4時間超えてしまうだろうけど。

歌舞伎を観たことがないという人でも、すぐにその世界に入っていけるハズ。当日発売の立ち見席もあるようなので、暇を見つけて、また観に行こうと思っている。

photo/「桜姫」パンフレットとチケット。前から4列目の平場(床に座布団を敷いた席)。長時間の体育座りはキツかったけれど、役者さんが乱入してくるラッキーな位置だった。私のすぐ後ろを橋之助サンや勘太郎サンが駆け回ったとき、白粉(おしろい)の残り香が。観客の足を踏まないように気をつけながらの演技、オツカレサマです…。

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